α-グルコシダーゼ
α-グルコシダーゼ阻害薬 のα–グルコシダーゼは糖の分解酵素でα-グリコシド結合を加水分解する働きがあり、腸内細菌に栄養を奪われないよう、分解は吸収直前の上皮細胞で行います。
主な二糖類としてはマルトース(麦芽糖)、スクロース(ショ糖(砂糖))、ラクトース(乳糖)、トレハロースがあり、それぞれ分解されると血糖値に関与するグルコースが生成します。
単糖類であるフルクトース(果糖)やガラクトースは血糖値には直接関与しないものの、肝臓でグルコースに変換されることで血糖値への影響が懸念されます。
ラクトースは乳製品、母乳等に含まれ、トレハロースは甘味料として食品添加物等に含まれています。

α-グルコシダーゼの加水分解反応は、酵素中のアミノ酸残基に含まれるカルボキシ基(ーCOOH)が、グリコシド結合のアノマー炭素に求核置換反応を起こすことによると考えられ、この求核置換反応によりアセタールが分解されないようにするのがα-GIです。
α-グルコシダーゼ阻害薬 (α-GI)
α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)は上記の酵素を阻害することによりグルコースの吸収を遅らせ、食後の急激な高血糖を防ぎます。
化学構造からもわかるように、単糖構造に近いほど幅広く酵素を阻害し、またアセタール構造を持たず、多くの水素結合により酵素との親和性も高いため、糖類と競合しても効果的に分解を防ぐことができます。
副作用の観点では、酵素を阻害することで糖類が分解されないまま消化管を通過することになるため、異常発酵や腸内浸透圧の上昇などによる腹部膨満や放屁、下痢等の消化器症状が現れやすくなります。
ミグリトール(セイブル®︎)は単糖構造に近く小腸で吸収されるため、消化器系の副作用は出にくいとされていますが、ラクトースやトレハロースの分解を抑制する働きもあるので、乳製品やお菓子などを好んで食べる方は注意が必要です。



アカルボースのように4つの糖を持つ構造だと、より大きな糖類を分解するアミラーゼ阻害活性を持つのも納得です。
構造活性相関から、ボグリボースよりは弱いものの、スクラーゼ阻害活性が高められた薬剤設計であることも特徴の一つです。
α-グルコシダーゼ阻害薬 の強さ比較
阻害定数を確認してみると、α-グルコシダーゼの阻害作用はボグリボース>ミグリトール>アカルボースといったところですが、臨床量ではボグリボース0.8〜0.9mg/日、ミグリトール150〜225mg/日となり、ラクターゼやトレハラーゼも阻害できるミグリトールの方がやはり効果は高い印象です。

立ち上がりの早さや副作用の発現頻度等によっても使い分けがされていますが、副作用に関しては食習慣の影響も考慮せねばなりません。ミグリトールは食後高血糖を防ぐ意味では食直前に服用する必要があるものの、HbA1cに関しては食後(食事中)服用でも食直前と同程度に低下させるともされています。
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